【薬学部 物理化学】条件付き就職と浪人生活のプレッシャーを乗り越えて

薬学部 物理化学

就職先は決まっている。けれど、薬剤師国家試験に落ちた。
試験翌日、会社から届いた通知にはこう書かれていました。
「1年以内に合格できなければ、内定取消」
その瞬間、頭の中が真っ白になりました。現実を受け止めることすらできず、「こんなはずじゃなかった」「来年も落ちたらどうなるんだろう」と、漠然とした不安が一気に押し寄せてきました。

それでも何かしなければと、独学で模試を受けてみたものの、総得点は150点台をさまようばかり。とくに物理化学は壊滅的で、選択肢を見ても何を問われているのかすら分からない問題もありました。焦りが先に立ち、参考書を開いても文字が頭に入らず、ページをめくる手がすぐ止まってしまう。「もしかして、来年も受からないんじゃないか」──そんな思考が、気がつけば毎日のように頭を支配していました。

限界を感じ、家庭教師の先生に助けを求めたのは、そんなときでした。最初に提示されたのはチェックテスト。自分の理解度をすべて洗い出すものでしたが、結果は惨憺たるものでした。けれど先生は、それを見てもまったく動じることなく、
「今はできないだけ。ここから上げればいいんです」と、淡々と冷静に言いました。

その言葉が、正直とても救いになりました。

先生は、私の弱点と得意分野を精密に分類し、週単位の学習スケジュールを作成してくれました。
物理化学では、公式の導出過程を自分の口で説明できるまで徹底的に演習。反応速度や平衡の計算問題も「式」ではなく「意味」から理解することで、知識がつながり始めました。一方、比較的得意だった薬理では、過去問の難問を中心に演習し、取りこぼしを減らすことで総得点を底上げしていきました。

毎回の授業では、理解度が数値化され、進歩が目に見えるようになっていました。小さな「〇」が毎回の指導ノートに増えていくことで、「ここはもう大丈夫」という感覚が自分の中にも根づいてきたのです。以前は「分からない」を隠すようにしていた私が、「分かるところが増えてきた」と感じられるようになったのは、大きな転換点でした。

気持ちが沈んだ日は、無理に詰め込まず、短い休憩を挟みながらタスクを細分化。それでも不安で集中できない日もありました。そんなとき先生は、「焦る気持ちは正常。それでも、手を止めないことが大事」と声をかけてくれました。思い詰めていた私にとって、その一言は本当にありがたくて、スケジュール表の達成チェックを見返して「今日も少しは進めた」と思えることが、前に進む力になっていきました。

勉強を始めて3か月が過ぎた頃から、模試の点数が少しずつ伸び始めました。とくに苦手だった物理化学で、初めて合格圏の点数を取れたときの感動は今でも忘れられません。それは、単に数字が上がったことだけでなく、「ここまで来たんだ」という実感と、「もっとやれるかもしれない」という前向きな気持ちを生んでくれたからです。

そして迎えた国家試験本番。手は少し震えていましたが、問題を前にして「ここは解ける」「次に進もう」と、冷静に判断しながら解答する自分がいました。以前のように焦って頭が真っ白になることはなく、むしろ「できることがある」安心感が支えになっていたのです。

合格発表の日。合格通知を手にした瞬間、涙が止まりませんでした。
家族に連絡し、先生にもすぐ報告しました。「一人だったら絶対無理でした」と伝えると、先生は「あなたが努力したからですよ」と笑ってくれました。そのとき、この一年の努力がすべて報われた気がしました。

今、無事に正式入社を果たし、薬剤師として現場に立っています。
患者さんの前に立つたびに、あの不安で眠れなかった日々や、机の前で悩み続けた夜を思い出します。けれど今は、自信を持って薬の説明ができる。「あの努力が今の自分をつくっている」と、そう思える毎日です。

もし、いま「自分はもうダメかもしれない」と思っている薬学生がいたら、私から伝えたい。
間に合わないことなんてない。必要なのは、正しい方法と、信じてくれる誰かの存在。そして、手を止めずに前に進み続けるあなた自身です。

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(土日祝日、年末年始、夏季休業日を除く)
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